きっかけ:文化祭の体験企画として「自分たちの学校をVRで走る」
文化祭の企画を考えていたとき、「せっかくVRを作れるなら、来場者が思わず笑顔になるものにしたい」と思った。そこで生まれたコンセプトが「高専の中で車を乗りこなす」だ。
自分たちが毎日歩いている廊下や校舎を、車で疾走できたら面白い。VRChatのワールドとして作れば、文化祭が終わった後も体験することができる。方向性が決まり、制作が始まった。
チーム体制:分業で製作に集中する

このプロジェクトはチームで動いた。自分はワールド制作に専念し、運営とのやりとりや景品の準備などは仲間に任せた。
この分業の判断は正解だった。ワールド制作は想像以上に工数がかかる。「自分がやらなくていいことは任せる」という意識がなければ、クオリティを出しきれなかったと思う。それぞれが得意領域に集中できたことで、プロジェクト全体がスムーズに進んだ。
技術の核心:点群データから校舎を3Dモデルに
このワールドの一番の特徴は、実際の校舎をモデル化している点だ。
学校が保有する点群測定装置でスキャンしたデータを提供してもらい、そこからBlenderでメッシュを作成した。点群データはそのままでは使えないため、不要な点を間引き、面を張り直し、VR向けに最適化する作業が必要だった。
メッシュ化に取り込んだ後は、Unity上でレースコースとして組み上げた。ただ校舎を再現するだけでなく、「コースとして気持ちよく走れるか」を意識してレイアウトを調整した。車のシステムはアセットを活用し、自分でゼロから作らない判断をした。制作時間が限られている中で、コアな体験の質に集中するためにアセットを使いこなすことは重要なスキルだと実感した。
企業との協働:文化祭前にVRイベント展示
文化祭本番の前に、企業様の協力をいただいてVRイベントでの展示機会もいただいた。
一般来場者ではなく、VRに慣れている方々に実際に体験いただく場は緊張感が違った。「ありがとうございました!」という明るい反応をもらえたことは自信になったし、フィードバックを本番前に受けられたことで、細かい調整にも活かせた。
当初は一周10分のコースで作成していたが、多くの体験者が一周できずに体験時間を終了していた。そのため、文化祭では大幅に時間を短縮し一周2分ほどに改善した。
学んだこと:VRカーレースは酔いやすい
いくつか想定外の学びもあった。その最たるものがVR酔いだ。
カーレースという性質上、加速・旋回・視点移動が激しい。体験してもらった来場者の中には、数十秒で酔いを訴える人もいた。VRコンテンツにおける快適性設計——移動速度の上限、視野角のコントロール、酔いやすい動きのパターン——は、次回以降で必ず意識すべき課題として残った。
また、分業の重要性も改めて痛感した。技術的なアウトプットに集中できる環境は、仲間が支えてくれたから成立した。「全部自分でやる」ではなく「チームで最大化する」という発想は、今後の開発でも大切にしたい。
おわりに
自分たちの学校をVRで走り回れる体験は、来場者にとっても新鮮だったようで、常に行列ができていた。点群データの活用、VRChatワールド設計、企業との協働——この文化祭プロジェクトは、技術と現場の両方を学べた濃い経験になった。